オルネッライア2009のキー・ワードとして「レクイリブリオ(均衡)」を選びました。2009年は両極端のヴィンテージで、メリハリの効いたフレッシュ感と円熟した柔らかい温かさ、晩熟型のブドウと早熟型のブドウという正反対の要素が樽の中で熟成し、ブレンドすることで絶妙のバランスになったことを表現しています。
このキー・ワードをモチーフに、ジャン・ホアン（張洹）がヴェンデミア・ダルティスタの第4回目となる作品を担当しました。

1965年、中国の安陽（河南省）生まれ。中国の現代芸術を代表するアーチストの一人で、パフォーマンス、彫刻、絵画の分野で活動し、国際的にも非常に高い評価を受けています。ニューヨークで過ごした後、2006年から上海に在住し、同地を活動拠点にしています。広範囲で多角的に活動しており、パフォーマンス、写真、彫刻、映像、絵画、インスタレーションに至るまで、多くの作品を発表。いろいろな芸術の形態を使って中国の伝統文化をジャン自身の過去、自分の哲学、人間性の視点で表現しています。ジャンの作品に繰り返し現れるテーマは、伝統的な東洋の文化を現代風に解釈することで、これにより、極めて広い分野で洗練された芸術作品を作り出しています。仏教や古代東洋の技法を取り入れることにより、偶像やアイコンを取り上げて、そこから現代的で新しい美を表現する上で、豊かな着想を得ています。ジャンの芸術的なテーマは、東洋の伝統を想起させることにあります。ジャンの作品には、伝統と革新が同時に内在し、現代美術、アイコン、中国の伝統的なテーマが一体となって深く結びついています。

紀元前6世紀の有名な哲学者、孔子からインスピレーションを受け、ヴェンデミア・ダルティスタのために制作したのが「孔子に問う」と題した連作です。オルネッライアの熟成庫前の中庭の中央に、孔子を打ち出した鋼の彫刻を作成しました。ダブルマグナム（3リットル）の各ボトルには、孔子の絵を描いて孔子の言葉を引用しており、人生の知恵を表現しています。アンペリアル・ボトル（6リットル）の10本には、全体が1つの連作としてデザインしてあり、各ボトルには、孔子の像と、年齢ごとの孔子の教えの一つである「七十而従心所欲不逾矩（70歳になって自分のやりたいことを素直にやっても人の道をはずさなくなった）」の10文字が一文字ずつ入っています。ダブルマグナムとアンペリアルの各ボトルには通し番号を振り、ジャンが直筆で署名を入れました。世界に１本しかないサルマナザール（9リットル）のボトルには、鋼で作った楕円形の彫刻を配し、孔子の肖像を刻んであります。ボトルには、ジャンの署名が入っています。

ジャン・ホアンがヴェンデミア・ダルティスタのためにデザインした「レクイリブリオ(均衡)」の大型ボトルの一部は、2012年4月27日、香港でサザビーズの協賛により競売し、収益金は全額、「浩然藝術與教育基金有限公司」へ寄贈しました。