ヴェンデミア・ダルティスタ
マリーナ・アブラモヴィッチ
オルネッライア2023
「ラ・ヴィタリタ (生命力)」
オルネライアの2023年ヴィンテージを表す言葉として、「ラ・ヴィタリタ(生命力)」を選びました。「生命力」は、存在そのものに関わる深い概念です。人間が、どれほど長くエネルギーに溢れ、生産的なのか、また、生命力がどこまで人生を長い期間に渡って豊かにしてくれかへの問いでもあります。
ワインと芸術の融合である「ヴェンデミア・ダルティスタ」は、今回、第18回目となります。「ラ・ヴィタリタ」をモチーフに、芸術作品を制作するアーティストとして、マリーナ・アブラモヴィッチが選ばれました。
芸術家について
アブラモヴィッチは、世界的な現代美術家で、セルビアのベオグラード生まれ。1970年代初頭から頭角を現し、パフォーマンスを視覚芸術に昇格させました。作品は、コンセプトと身体、持久性と共感、共犯性と制御の喪失、受動性と危険性を結びつけ、自身と観客双方にある自己探求の境界を拡張しています。パフォーマンス・アートの黎明期から精力的に活動し、25年以上に渡り、ヨーロッパやアメリカ各地の主要な美術館で本格的なパフォーマンス・アートの大規模な個展を開催しました。
ヴェンデミア・ダルティスタの作品
アブラモヴィッチは、「ラ・ヴィタリタ」をモチーフに、「自己」を中核とした作品を制作しました。作品は、自己のイメージを捉える行為を通じて、意識と決意を表明しようとしています。この作品により、自身を絶え間ない変容の過程にある存在として表現しました。その中では、芸術と人生との境界が常に揺れ、再定義されているのです。
750mlボトルのラベル用にデザインしたラベルでは、シンプルで抑制の効いた線を使い、アブラモヴィッチを現代のメドゥーサとして表現しています。髪は、蛇の代わりにブドウをつけた蔓を描き、ギリシャ神話の怪物は、豊穣と生命力の象徴へ姿を変えました。
ダブルマグナムボトル(3L)のラベルでは、ブドウがアブラモヴィッチの顔を覆っています。これにより、自然の生命力と正面から向き合う勇気を表現し、高まる生命の姿を映し取っています。作品を見ると、芸術が生命へ変容する瞬間を感じ取ることができます。
ダブルマグナムボトルで表現した生命力のエネルギーは、インペリアルボトル(6L)において、真の姿を表します。映画のように連続する映像の中で、アブラモヴィッチの顔は次第にブドウに包まれ、最後のラベルでは、目が一つだけ残ります。そのまなざしは鑑賞者を捉えて離さず、自画像を強烈な視覚体験へ昇華させています。
1本しか生産しないサルマナザール(9L)では、生命力と感覚が持つ時間性を組み合わせました。ボトルの上部には、アブラモヴィッチの代表作、『エナジー・ハット』から着想を得た赤い円錐形のロウソクが据えてあります。キャンドルに火を灯すと、ゆっくりと燃え進む炎が儀式としての時間を刻み、ワインを味わう瞬間へ気持ちが変化するのです。その横に、ニーノ・ロータの音楽の45回転のレコードを添え、音楽が空間自体を変容させています。ラベルには、次の言葉が印字してあります。”Slowly drink wine with eyes closed and listen to the music.”「目を閉じ、音楽に耳を澄ませ、ゆったりとワインを味わうべし」